神様に逢いに行った
先日に発売された写真家・上田義彦さんの写真集『YUME』の刊行記念トークショーを観に、青山ブックセンターへ行ってきました。上田さんを生で拝見するのは初めてで、行くまでに(行ってからも)緊張が抜けなかった。自分のなかでは神様みたいな存在だから。そんな写真の神様は、ポロシャツにハーフのチノパンというラフな恰好で現れました。トークのお相手は上田さんとは20年来のつきあいがあるという、G/P gallery主催者の後藤繁雄さん。長いので畳みます。
トークショーは、『YUME』の制作話を中心に進められ、それ以外にも、広告写真家(主に無印良品やサントリーの烏龍茶・伊衛門、資生堂化粧品など)として活躍されている上田さんの今までを、後藤さんから話してもらったりして、自分のなかで不思議な存在だった上田さんがどんな人なのかを垣間見ることができたような気がします。ってか、後藤さんも上田さんを『不思議な人』って言うてたな。後藤さんの質問に対し、言葉を選ぶように答えていた上田さんが印象的で、変な話、写真の印象のまんまの人だなあ、と思いながら聞いていました。
一方で、意外と言ったら失礼だけど、とても情熱的な人なんだなと思った。写真を撮りたくなるのは突然のことで(話を聞いていると“発作”に近い感じ)、撮らなきゃ!と思ってバーッと撮るみたい。撮っているあいだは「このまま目が潰れてもいい」って思うんだって。ああ、だからああいう写真が撮れるのか、と思えた。静かなのに、ずっと心の中の印象に残る写真。
トークも終盤、あー時間が経つの早い!って思っていたら、後藤さんが突然、「上田さんに直接質問したい人はいますか?」と仰られて緊張が一気にピーク!(ずっとドキドキしてたのが、さらに)。すぐにはまとまらなかったけど、わたしも質問することができました。それは、「デジタルカメラが中心のいま、上田さんにとって、フィルム写真とはどういった存在ですか」という、もう何回も訊かれているであろう質問(上田さんは広告写真もすべてフィルムカメラで撮っています)。それなのに、上田さんはやっぱり丁寧に答えてくれました。上田さんにとってのフィルムは『信用できる』存在とのこと。昔からつきあってきているフィルムを信用している、そう仰られていました。「また、現像液・印画紙がもしなくなってしまっても、それを作るのは楽しいと思うし、昔は現像液も印画紙もなく、乾板技術とかもっと不自由だったことを思えば、それほど大変じゃないかもしれない」とも仰っていました。
トークショー終了後はサイン会が行われ、わたしもサインをもらってきました。万年筆でサラサラと書いているのをじっと見つめ、「ありがとうございました」と言うので精一杯でした。やっぱり不思議な人だと思った。アラーキーの時なんかは、自分の思いのたけをガツガツ言って、挙句の果てに握手まで求めたんだけど(メーワクな話だw)、上田さんにはそれが無理だった、ってか無理でもいいや。それくらいの存在。ま、そうは言っても質問する時に「(フィルム好きとして)一生ついて行きます!」さりげなく告白しちゃったけどね(!)
余談ですが、上田さん側の最前列に座っていたため、上田さんご本人のお顔はあまり拝見できなかったのですが、腕とか手とか見てました。一方、上田さんの反対側にいた後藤さんとはしこたま目があった気がする。笑。後藤さん、いい人だったなー。「写真ってなんだかわからないところが面白い」って仰っていたのがうれしかった。そうなんだよ、わからないからわかりたくてずっと求めちゃうし、面白いんだよ。
- 作者: 上田義彦
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