フミヲちゃんのかけら
いろいろあって、お葬式には出なかったから、骨になったフミヲちゃんは見ていない。
なので、そっちに行ってしまった実感も、いまいちまだわからない。
ふたりで暮らした家を離れるときに、家のなかの片付けをしてたんだけど、
バレンタインのときにあげたチョコの空き箱をなんとなく開けてみたら、フミヲちゃんの爪が入ってた。
脱力したなあ、あれは。
見つけたときは、そっちに行ってたぶんひとつきくらい経っていたから、触れるものとして残っていたのはその爪だけだった。
捨てるか迷って、結局そのままにした。きっともう、いまはないのだろう。
新しい家に持って行くという選択肢はなかった。自分なりに区切りをつけたかったんだと思う。
結果的には持って行かなくてよかった。でもあの爪のことは、ふとしたときに思い出すんだよ。
別に意図的に置いていったわけじゃない、フミヲちゃんの切った爪。ゴミ箱代わりに使っただけの空き箱。
それらはどれも続くはずだった、日常の一部。